「ヨーロッパ思想の二つの礎石」の解説を終えて

岩田靖夫『ヨーロッパ思想入門』を教科書にした「西洋哲学」の講義、今日で(全15回のうちの)8回を終えた。イントロダクションにあてた第1回を除く7回の講義では、岩田が「ヨーロッパ思想の二つの礎石」として提示する(iii~v頁)、「ギリシアの思想」と「ヘブライの信仰(=キリスト教)」の解説を行った(前者に4回、後者に3回をあてた)。

 ただ、この7回で「二つの礎石」にかんする岩田のすべての説明をカバーできたわけではない。スケジュールの都合上、泣く泣く割愛した部分が大きく3つある。1つ目は、「ホメロス・ギリシア悲劇」(19~42頁)だ。『イリアス』や『オイディプス王』などの注目箇所(読みどころ)がわかりやすく記されているのだが、講義テーマの「哲学・思想」と内容的にずれるので、全部カットすることにした(西洋古典文学を専門とする僕にとって、この決断はかなり辛いものだった)。2つ目は、「パウロ」(139~148頁)。新約聖書の説明をするにあたって、パウロ書簡の紹介を省くのはまずいことはわかっていたのだが、今回は、福音書群(マタイ・マルコ・ルカ・ヨハネ)におけるイエスのたとえ話に焦点を当てたかったので、触れないことに決めた。最後の3つ目は、「トマス・アクィナス」(154~159頁)だ。一般的に考えると、トマスを欠いた西洋哲学史などあり得ないが、岩田が取り上げるトマスの「存在する」をめぐる議論は、それまでのキリスト教の話とかならずしも密接に結びついているわけではないので、思い切って省略することにした。

 正直なところ、僕は「二つの礎石」だけで15回を使ってもいいのではないかと思っており、その場合は、間違いなく「ホメロス・ギリシア悲劇」「パウロ」「トマス・アクィナス」の話もする(講義名は「ヘレニズム・ヘブライズム思想入門」などに変更する必要があるだろう)。ただ実際問題それはできないので、次回以降の残り7回では、名残惜しさを抑えながら、近現代の哲学史をハイスピードで通覧していくことにしたい。

つねに多くのことを学びつつ年をとる―勝又泰洋の学問日記―

このサイトでは、学者の卵である私、勝又泰洋が、日々の勉強・研究について(もっぱら自身の備忘のために)簡単な文章をものしています。サイト名の「つねに多くのことを学びつつ年をとる」は、古代ギリシアの政治家ソローンによる詩の一節です。これを座右の銘として、毎日マイペースに学問に励んでいます。

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