2019年が始まった。今年も研究・教育活動に精を出していきたいが、日々の仕事を、なにも考えずに単純作業としてこなしていくというのでは、自分のためにならないし、そもそも面白くない。そこで毎年やっているのが、その一年の(おおざっぱな)テーマ設定である。あれこれ考えてみたが、2019年のテーマは、「西洋古典の受容」ということになりそうだ。
まず、研究の面だが、準備している論文と学会報告は、いずれも「受容」関係のものだ。これは、かなり細かなケーススタディといえるものである。
次に、教育の面。仕事先の大学のひとつで、「アダプテーション批評入門」(仮)の講義を行う。これは、上記の研究の話と対をなすものだ。というのも、この講義の主目的は、「受容」の一般理論の解説をする、というものだからだ。
最後にもうひとつ、(ギリシア・ローマ神話を扱う)カルチャーセンターの講座では、オウィディウス『変身物語』を取り上げ、そのヨーロッパ美術への影響の話(つまりは「受容」の話)を数多くしたいと思っている。
僕がギリシア・ローマの勉強を始めたのは、もともとは、これが(聖書とあわせて)西洋文化史・思想史全体を理解するための基本材料になると思ったからだ。別の言い方をすると、メインで勉強したかったのは西洋文化史・思想史であって、ギリシア・ローマそれ自体に興味があるというわけではなかった。ただ、そのつもりでギリシア・ローマの勉強を始めると、あまりにこれが面白く、やめられなくなってしまっていたわけだ(以前、関連のことについて、日本西洋古典学会HPに小文を寄せたことがあるので、興味がある方は次のリンクを参照されたいhttp://www.clsoc.jp/agora/izanai/kikkake/131226_4.html)。
そうして10年弱が経ったのが今年だ。ギリシア・ローマについて一定の知識は得られたと思っている(不遜かもしれないが)ので、今度は、その知識をフルに使って、これらが西洋文化・思想のなかで、どのように「利用」(という表現がふさわしいだろう)されてきたのかを探求したいと考えている。ようやく当初のプランに戻ってきたというべきかもしれない。
この文章を書いていて、胸が高鳴ってきた。今年も、真剣に、そして楽しく、仕事をしていきたい。
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