今回は、「ロンドンでの国際学会」のシリーズ記事の第一弾ということで、僕が先日(7/4~7/8)参加してきた学会の概要を記すことにしたい(下に公式ウェブページのリンクを貼っておくので、こちらも合わせ参照されたい)。
主催は、ギリシア・ローマ学では世界最大の規模を誇る学会、Fédération internationale des associations d'études classiques(頭文字をとって、FIEC「フィエック」と呼ばれるのが普通)で、5年に一度、夏に研究集会を開いているのだが、今回はその第15回の集会だった。開催地は、集会ごとに変わり、今回はロンドン。ちなみに過去5回の開催地を記しておくと
第10回(1994年):ラヴァル(カナダ)
第11回(1999年):カヴァラ(ギリシャ)
第12回(2004年):オウロ・プレト(ブラジル)
第13回(2009年):ベルリン(ドイツ)
第14回(2014年):ボルドー(フランス)
となる。文字通りワールドワイドを志向していることがわかるだろう。ひとつ補足しておきたいのは、今回に限っては、イギリス最大のギリシア・ローマ学の学会であるClassical Association(CA)の年次集会と合同で開催、というかたちだったということだ(CAの年次集会は、毎年4月、イギリスのどこかの大学で開かれるのだが、今回はFIECの集会がたまたまロンドンだったため、合同というかたちになったようだ)。
場所にかんしてもう少し細かい話をすると、プログラムにかかげられたほとんどのイベントは、ロンドン大学のインスティテュート・オブ・エデュケーションInstitute of Educationで行われた。まさにロンドンの中心部で、たとえばヒースロー空港からのアクセスもすこぶる良い(地下鉄のラッセル・スクエアRussell Square駅から徒歩で約15分)。ちなみに僕は、この建物から歩いてすぐのところにある施設に泊まっていたので、(海外での研究活動でありがちな)移動にかんするストレスは一切なかった。
集会のプログラムはさまざまな要素から成っていたわけだが、その中心は、いうまでもなく、「研究発表」である。4人前後の研究者が、共通のテーマのもと、ひとつのグループ(これを「パネル」という)を作り、各パネルが、4日間(7/5~7/8)にわたり、いわゆる「パラレル・セッションparallel session」の形式で発表を行う(割り当てられた別々の部屋で同時並行的に進める)、というものだった。パネルの数は全部で87(!)あり、各パネルの持ち時間は2時間。パネルのメンバーが4人だとすると、一人が話せる時間は20分ほどしかなく、質疑応答もほんの5分くらい、といったところだ。せわしない雰囲気だが、参加者の総数を考えれば仕方ないことだろう。
これに次いで重要なのは、「基調講演plenary lecture」である。いま世界でギリシア・ローマ学をリードする数名の研究者が、パネル発表の合間合間(正午と夕方)に、比較的広いテーマをかかげて、大きな部屋で1時間話をする。講演の数は7本で、僕もその一部を聴きに行った。
発表関係では、もうひとつ、「ポスター発表」も無視することはできない。30人の研究者が、それぞれの研究内容を、A1くらいの大きさの紙のポスターにまとめ、集会の一部の時間を利用して、見にきた人たちとディスカッションをする、というものだ。ディスカッションの時間にはもちろん制限があった(発表者が常にポスターのそばにいるわけにはいかない)ものの、ポスター自体は期間中ずっとそれ専用の部屋に掲示されていたので、僕も時間を見つけて中身をチェックさせてもらった(ひとつ悔やまれるのが、僕と同じでプルータルコスについて発表した研究者の方とお話しすることができなかったことだ)。
これだけではない。FIECの集会は、「お祭り」的な性質もそなえている(何しろ5年に一度の機会で世界中のギリシア・ローマ学者が集まってくるわけなので)ため、レクリエーション風のイベントも複数行われた。たとえば、ギリシア・ローマ学関係の無声映画(20世紀初頭のもの)の上映、ギリシア神話を題材にしたオペラの上演、テムズ河のボートでの遊覧、ロンドンの文化施設(大英博物館など)のガイド付きツアーなどがそれに含まれる。そして、学会ということで、当然のごとく、「懇親会conference dinner」も行われた(場所は、ロンドン大学の図書室も入っている、セネット・ハウスSenate Houseだ)。学問とは直接関係のないところでも参加者同士が交流できる機会が多数用意されていたわけだ。
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