朝日カルチャーセンター中之島教室にて、私が毎月第四月曜に担当している「ギリシア神話入門」の次回の案内です。日時は、2019年8月26日(月)15:30~17:00です。悲劇詩人エウリーピデースによる『アウリスのイーピゲネイア』のご紹介をします。本作の主人公であるイーピゲネイアは、トロイアー戦争におけるギリシア軍の総大将アガメムノーンの娘であるわけですが、とある事情により、戦争開始前に神の生贄となることを余儀なくされるのです。しかもこの場合重要なのは、彼女を死へと導く直接のきっかけが、父親のアガメムノーンの判断にある、という点です。したがって、この「家族内殺人」にかかわる登場人物たち(上記の2人のほかにも、たとえばイーピゲネイアの母親・アガメムノーンの妻であるクリュタイメーストラーも登場します)による悲痛に満ちた言葉のやりとりこそ、本劇の一番の見どころであると考えられます。
ただし、このイーピゲネイアの最期については、後代の著述家たちによってある興味深い脚色が加えられています。オウィディウス『変身物語』の記述を例にとると、なんとイーピゲネイアは、殺されそうになった瞬間、女神アルテミス(ローマ名はディアーナ)によって、雌鹿にすり替えられ、死なずに済むことになるのです。よく知られているのは(エウリーピデースのバージョンではなく)むしろこちらのバージョンかもしれず、たとえば下に掲げたセバスティアン・ブールドンによる《イーピゲネイアの犠牲》(1643年頃、オルレアン美術館蔵)においても、イーピゲネイアと雌鹿が入れ替わる様子が描かれています(中央下にはアガメムノーンがいるのも確認できます)。
以上の内容にご興味のある方は、ぜひお申し込みのうえ、ご参加ください。
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