NHK文化センター梅田教室にて、私が毎月第一月曜に担当している「知るほどおもしろギリシア神話」の次回の案内です。日時は、2019年9月2日(月)10:30~12:00です。オウィディウス『変身物語』の開始部でスポットライトが当てられる、特徴的な一組の夫婦についてお話しします。それぞれ名前をデウカリオーン(夫)、ピュッラー(妻)というこの二人は、ユッピテルが引き起こした大洪水を生き延びた唯一の存在で、なんとそのあと人類の始祖となるのです。下に掲げた絵は、ルーベンスの《デウカリオーンとピュッラー》(1636~1637年、プラド美術館)ですが、注目すべきは画面左の夫婦の動作です。彼らは後方に石を投げているのがわかるかと思います。オウィディウスによれば、結局この石が人間へと変形したということで、ルーベンスの作品でも裸の人間たちが夫婦の背後にいるのが確認できます。
「大洪水を生き延びた者が人類の始祖となる」という展開といえば、旧約聖書の『創世記』におけるノアの物語に言及しないわけにはいきません。箱舟によって洪水を乗り切ったノアの家族のなかに、セム・ハム・ヤフェトという3人の息子がいたわけですが、『創世記』の記述によれば、この3人から人間たちが広がっていったとのことです。オウィディウスの説明と合わせると、大洪水というのは、「人類の滅亡」と同時に「人類の新生」にもつながる重要な契機と考えられそうです。「死と再生」は、よくある神話のパターンですが、これもそのひとつかもしれません。
以上の内容にご興味のある方は、ぜひお申し込みのうえ、ご参加ください。
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