ラテン語文法の補助プリント

大学でラテン語文法を教え始めて数年が経つが、これまで、教材にかんしては、もっぱら(既製の)教科書だけを用いてきた(ただ、追加で教えたい事柄もとうぜん出てくるので、その場合は板書で補う、というスタイル)。しかしながら、教科書の説明というのは、(当たり前だが)少しずつ前進していくものなので、毎回こちらが与える知識はどうしても断片的になってしまう、という問題があった。教わる側の学生も、自分が現時点で何パーセントの地点にいるのかがわかりづらい、と感じることがあったと思う。たとえば、ある回で名詞の第1変化を学んでも、ほかの変化パターン(=第2変化~第5変化)との違いが把握できないかぎり、この第1変化が「わかった」ということにはならないのではないか(類似のことについては、2019.1.30の記事でも書いたので、ご覧いただけると幸いである)。

 そこで今年度から、この問題の解決に役立つような、補助プリントをつくることにした。一言でいうと、このプリントには、ある体系(たとえば「名詞」のそれ)の全容を記すつもりだ。ただ、「全容」とはいっても、細かい注意点などはすべてカットした、「ごく大雑把な見取図」程度のものである(細々とした事柄を記しだしたら、それこそ当初の問題が解決しないことになってしまう)。そしてたとえば、第1変化名詞を学ぶタイミングで、「名詞」の補助プリントを配ってしまい、全体における第1変化名詞の位置づけをまずは頭のなかに入れてもらう、という計画だ。ここで第2変化名詞等の説明もすることになるだろうが、もちろんすべてを暗記してもらうということではなく、第1変化名詞の役回りさえ理解できればよい、というスタンスだ。秩序づけられた大容量の情報を、とにかくいきなり学生に放り投げる、というイメージ。

 プリント内の解説は、いささか乱暴なものになるだろうが、文法学習(とりわけ初学者のそれ)には、ある程度の「粗雑さ」も必要なはずである。これまでは、「ゆっくり丁寧に」を意識しすぎて上手くいかなかった部分があるので、今年度はこのプリントを使って少しでも優れた授業ができればと思っている。

つねに多くのことを学びつつ年をとる―勝又泰洋の学問日記―

このサイトでは、学者の卵である私、勝又泰洋が、日々の勉強・研究について(もっぱら自身の備忘のために)簡単な文章をものしています。サイト名の「つねに多くのことを学びつつ年をとる」は、古代ギリシアの政治家ソローンによる詩の一節です。これを座右の銘として、毎日マイペースに学問に励んでいます。

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