2019.01.31 14:00J・キャンベルからの力強いメッセージ半期担当させてもらった神話学説史の講義、今日がラストだった。J・キャンベルを取り上げたのだが、この人物を最終回にもってきた理由は大きく2つある。ひとつは、単純に、時代的にもっとも新しい人物だから、というもの。そしてもうひとつは、キャンベルのインタビューの記録である『神話の力』(詳細は下記リンクを参照)に見える、神話をめぐる彼の力強いメッセージを学生に紹介したかったから、というもので、僕にとってはこちらのほうが重要な理由だ。学生の反応のことも含めて、そのメッセージについて簡単に書いておきたい。 キャンベルは、インタビュアーのB・モイヤーズにたいし、神話には「教育的な機能、いかなる状況のもとでも生涯人間らしく生きるにはどうすべきかを教えてくれる機能」(95...
2019.01.30 08:36ラテン語の授業を終えて通年で担当したラテン語の授業、今日が最終回で、先週実施した期末試験の返却と解説を行った。 まずはとにかく学生たちにおつかれさまと言いたい。この授業は、8:45から始まる1限にあてられていたので、出席するだけで重労働という者も多かっただろう。しかも、毎回、開始と同時に小テストを実施し、これを受けることが出席のしるしだったので、そう簡単に休むこともできなかったはずだ。全32回を駆け抜けてきた彼らの心境はどのようなものだろうか。教師側から言わせてもらうと、非常によく勉強してくれたと思う。それは、今回の期末試験の平均点の高さが証明していることだ。 振り返ってみると、やはり反省点がいくつか出てきてしまう。最大のものは、知識の体系化のためにもう少し工夫をするべきだ...
2019.01.29 09:46物語論としてのJ・キャンベル『千の顔をもつ英雄』神話学の授業の準備として、大塚英志『ストーリーメーカー―創作のための物語論』(詳細は下記リンクを参照)を読んだ。この本を手にとったのは、第四章で、僕が授業で扱う予定のJ・キャンベル『千の顔をもつ英雄』(以下、『千の顔』)が紹介されているからだ。ただ、大塚氏は、「神話学」の視点で『千の顔』を論じるのではなく、(サブタイトルにもある)「物語論」の一種としてこの研究書を取り上げている。結果として僕にとって勉強になる論点が2つ出てきたので、それを簡単にメモしておきたい。 一つ目は、ウラジーミル・プロップの『昔話の形態学』が『千の顔』の比較対象となりうる、ということ。プロップの『昔話の形態学』(大塚氏の本では第二章で紹介されている)は、「(31種類の)機能」と「...
2019.01.28 14:422019/2/4の「知るほどおもしろギリシア神話」NHK文化センター梅田教室にて、私が毎月第一月曜に担当している「知るほどおもしろギリシア神話」の次回の案内です。日時は、2019年2月4日(月)10:30~12:00です。ホメーロス『オデュッセイア』に登場する、オデュッセウスの館の下僕たちにかんするお話をします。彼らは、脇役ではあるものの、それぞれが帰還した主人(=オデュッセウス)と印象深いかたちでかかわり合います。その具体的な中身をお知りになりたい方は、ぜひお申し込みのうえ、ご参加ください。
2019.01.27 09:33ユウェナーリス『諷刺詩』における「私」今年度ある大学で担当したリレー形式の講義で、僕はユウェナーリスの『諷刺詩』(日本語訳については下記リンクを参照)を扱ったのだが、今日は、その講義に参加してくれた学生たちのレポートを読んだ。 レポートの課題は、「『諷刺詩』のうちどれかひとつ歌を選び、そこで登場する「私」について論じなさい」としたのだが、これは、ユウェナーリス研究における中心的論点をふまえて考えたものだ。『諷刺詩』は、一人称の「私」が語るという形式をもつが、この「私」は、作者のユウェナーリスと単純にイコール関係で結べるわけではない(つまりこの「私」はペルソナである)、というのが大前提で、研究者たちは、この「私」の性質について長年議論を重ねてきた。 この「私」を特徴づけるものとして最も注目を...
2019.01.26 11:06定期試験期間中の大学図書館ちょうどいま、多くの大学は定期試験期間中だと思うが、僕がずっとお世話になっている京都大学も例外ではない。この時期の大きな特徴は、図書館が試験・レポートに追われる学生でいっぱいになることだ。これは毎年のことなので、もはや学生でなくなってしまった僕は、この時期に図書館を利用するのはなるべく控えるようにしている。僕がいることで、学生の貴重な座席を一つ奪ってしまうことになるからだ。 ただ今日の場合は、申し訳ないと思いつつも、例外的に長時間使わせてもらった。というのも、僕の住んでいる京都で久しぶりに雪が降り、エアコンありでも自宅がとても寒く、大学図書館の強力な暖房が恋しくなってしまったからだ。行ってみると、当然のごとく、空きスペースはあまりなかったが、なんとか座...
2019.01.24 17:45ラテン語の試験の採点一昨日、仕事先の大学のひとつでラテン語の定期試験を行い、いまその採点を進めている。 出題は、毎回実施してきた小テストからのみで、応用問題は一切なし、ということにしたので、おおむねよくできている。素晴らしいことではあるが、心の底から喜んでいるわけではない。というのも、この「よくできている」というのは、あくまで「最終得点が高い」という意味で、減点箇所に大きな問題があるケースも多いからだ。名詞変化を書く問題で、単数の属格形を間違えてしまっているのがその良い例だ。この間違いは、マイナス1点なので、最終得点への影響は甚だ小さいのだが、内容の観点からいえば、看過できるものではない。ラテン語の名詞変化において、単数の属格形はいわば「幹」のようなもので、これをわからな...
2019.01.24 14:20歴史哲学の書物としてのM・エリアーデ『永遠回帰の神話』今日の現代神話学の講義では、エリアーデを取り上げ、とくに彼の主著である『永遠回帰の神話―祖型と反復』(1949年)を丁寧に紹介した。学生のコメントを読んで少しだけ考えたことがあるので、メモしておきたい。 『永遠回帰の神話』の中心にある主張は、「「古代社会」は「(永遠回帰の)神話」を有効利用していたが、「近代社会」はそれを無視し、代わりに「(一回的・偶発的な)歴史」に重きを置いてしまっている」というものだ。学生の意見で目立ったのは、「エリアーデは、「近代社会」批判ありきで神話を論じている」というものだ。たしかにその通りかもしれない。僕も、「古代社会」を「神話を重んじる社会」とみなす必然性があるのかどうか、疑問に思っている。上記のコメントを書いた学生たちも...
2019.01.23 12:26構造主義の「地ならし」をした古典文献学者としてのニーチェ昨日(2019.1.22)の記事に続いて、内田樹『寝ながら学べる構造主義』(詳細は下記リンクを参照)について書きたい。久しぶりに読み返してみて、2点ほど気づきがあったのだが、今回は2点目のほうを扱う(1点目については昨日の記事をご覧いただきたい)。 内田氏は、構造主義の主要人物(ソシュールおよび「四銃士」のフーコー、バルト、レヴィ=ストロース、ラカン)の話をする前に、その「地ならし」をした存在として、マルクス、フロイト、ニーチェの3人について簡単に論じている。氏の見方によれば、構造主義の功績とは、私たちが主体として有していると信じ込んでいる「自由や自律性はかなり限定的なものである、という事実を徹底的に掘り下げたこと」(p. 25)であるとのことだが、上...
2019.01.22 11:26入門書のおもしろさ必要があって、内田樹『寝ながら学べる構造主義』(詳細は下記リンクを参照)を駆け足気味に再読した。学部生の頃に初めて読み、それ以降も幾度か本棚から取り出してきた本だ。今回、ちょっとした気づきが2点ほどあったのでメモしておく。話がややこしくなる(あと、長くて読みづらくなる)のを避けるため、記事は今日(2019.1.22)と明日(2019.1.23)の2回に分けようと思う。 というわけで1点目。「まえがき」で展開される、入門書の利点にかんする話。僕は、どんな分野であれ、いわゆる「入門書」を読むのが好きなのだが、内田氏も同じ考えをもっているようで、その理由として、以下のように述べている。入門書は専門書よりも「根源的な問い」に出会う確率が高い。これは私が経験から...
2019.01.21 08:082019/1/28の「ギリシア神話入門」朝日カルチャーセンター中之島教室にて、私が毎月第四月曜に担当している「ギリシア神話入門」の次回の案内です。日時は、2019年1月28日(月)15:30~17:00です。ウェルギリウス『アエネーイス』に登場する神々についてお話しします。この作品は、主人公アエネーアースをはじめとする人間たちの物語ではあるものの、彼らの行動にたいしては、つねに神々の強大な力が働いています。その具体的な内容をお知りになりたい方は、ぜひお申し込みのうえ、ご参加ください。
2019.01.20 12:07来年度のシラバスいくつかの大学でお仕事をさせてもらっている僕だが、今日、来年度のシラバスをひととおり書きあげることができた。とりあえず一安心だ。 シラバスを書く、という場合、それには大きく二種類がある。ひとつは、今年度から継続して行う授業(つまり今年度と同じ授業)にかんするもので、もうひとつは、来年度新しく始める授業にかんするものだ。前者については、今年度の反省点を生かしながら微調整をすればよいだけなので、作業にそれほど時間はかからない。それに対して後者のほうは、ゼロからつくる必要があるので、時間だけでなくエネルギーもかなり使うことになる。ただ、授業の内容を考えること自体はとても楽しい。全15回から成る「ストーリー」を組み立てる「脚本家」になったつもりで作業を進めるか...